虹のかけらを探しに行こう

徒然なるままに

お題「子どもの頃に勘違いしていた、ちょっと恥ずかしいこと」

 今でもそうだが、雷がこわい。昔の子供はおそらくみんなそうであったように、私も、「雷様におへそを取られるぞ」と脅かされて育った。そのせいかどうかはわからないが、雷様がこわかった。鍵っ子だったので、夏場夕立が来るとひとりでこわさを凌がねばならなかった。雷様から逃げねばならなかったので、押入れの中に隠れてみたこともある。蚊帳の中にいると安全だと言うので、ゴロゴロ言い出すと昼間から蚊帳をつって、その中で頭から布団をかぶって過ごしてみたりもした。板の間にいると落ちるとも聞いたので板の間をまたいで畳の上を伝うようにして移動してみたりもしていた。大人から見れば滑稽だが、真剣だった。

 ある夏の日 学校に行くと「忠霊塔に雷が落ちたんだって。見に行こう。」と言って友達が騒いでいた。雷が見られるのだと思った私は、おっかなびっくりついていった。一体どんなものが見られるんだろうと自分の目で確かめたかった。「ほら、あれだよ。」とみんなが指差す方を見たが、しかし、そこには何もなかった。雷に打たれて焦げた木だけがたっていた。

 私はその時まで、雷は実体のあるものだと思っていた。だから忠霊塔には、想像するに巨大な球体にトゲトゲが放射線状にいっぱい出ている、トゲトゲの先っぽには小さな球体がついているんだけど…、そんな感じのものが落っこっているんだと思ってた。

 友達はみんな知ってたんだと思うと恥ずかしくって何も言えなかった。黙って家に帰ってきた。親にも誰にも話さなかった。

 我が子を持って初めてこの話をした。笑いながら聞いてくれた。結局のところ一番こわかったのは、留守番だったのかもしれない。その後、今に至るまで落雷を目にすることもあるが、やはりこわいと思う。